なぜ雲南市の桜が人々を魅了するのか?桜守遠田さんインタビュー

なぜ雲南市の桜が人々を魅了するのか?桜守遠田さんインタビュー
雲南市が最も誇るもののひとつが、桜です。中でも特に有名なのは、斐伊川堤防桜並木です。全長約2kmに約800本の桜が植えられており、「日本さくら名所百選」にも認定されています。開花時期には、その桜のトンネルを見に毎年大変多くの観光客が訪れます。

なぜこの地域の桜はこんなにも美しく長い年月保たれているのか?その秘密に迫るべく、桜の手入れを年間を通じて行っている「さくら守」の遠田 博さんに、フランスからの留学がきっかけで島根県に移住したサシャさんと、現役の島根大学留学生のリアドさん、レダさんが雲南市の桜の美しさの秘密についてお話をうかがいました。

雲南市の桜を見に、毎年たくさんの人が訪れます。
サシャ:本日はよろしくお願いします。木次の桜はとてもきれいで有名ですが、実際に見て本当にきれいだと思いました。花が目の前にあるのにびっくりしました。
遠田:ありがとうございます。斐伊川堤防以外にも、斐伊川支流の三刀屋川沿いや、赤川沿いにもきれいな桜並木があったり、市内にはそういう桜の名所がたくさんあるんですよ。
レダ:今日は少し風が強かったですが、大雨とかもっと風が強いとき、桜は散らないですか?
遠田:咲き始めのころは少々風が吹いても落ちないけど、満開になると自然に散るので、そういうときに風が吹くと、一斉に散って「花吹雪」になることがあります。それはそれでとてもきれいですよ。
サシャ:シーズン中の観光客の数はどれくらいですか?
遠田:はい、以前は10万人程度でしたが、近年は12、3万人を超える人がこのちいさな町にやってきます。だからそのときはこの辺りは大渋滞(笑)。

桜が健康であることが一番重要なんです。
サシャ:手入れをした桜がきれいに咲いて、それをたくさんの人が見に来てくれるのはとても嬉しいでしょうね。
遠田:実は、私は桜が咲いているのをあまり見に行かないんです。私は、あくまで桜が元気に育つお手伝いをしているので、きれいに咲くことよりも、桜の木が健康であることが重要なんです。でもたくさんの人が見に来てくれるのは本当に嬉しいですね。
リアド:改めて、さくら守とはどういう仕事ですか?
遠田:1年を通して桜の手入れをする仕事です。冬の間は、桜の病気をした部分や不要な枝を剪定する作業。それと、肥料をやる作業。それ以外では病害虫防除や、桜の木の下に生えている草を刈る作業も大切です。そういうことをやっています。

サシャ:お仕事としてさくら守をされているんですか?ボランティアですか?
遠田:ボランティアではなくお仕事です。日本一のさくらのまちづくり事業を推進するために、桜守として活動しています。
サシャ:桜守になった理由は?
遠田:大学生のときから森林と樹木の勉強をしていて、その後県の森林・林業関係の仕事に就いたんです。それで県職員を退職したあとに依頼があって、以来11年間この仕事をしています。2019年4月から12年目になります。
レダ:まさに桜のプロですね。
遠田:実は私は桜をはじめとした「植物全般」には詳しいのですが、桜の名所などの観光のことは専門ではないんです。そのあたりは雲南市や雲南市観光協会のサイトを見ていただくとより詳しく載っていますよ(笑)。

サシャ:島根県にはたくさんの桜の名所がありますが、雲南市は特に桜への愛着が強いように思いました。
遠田:そうですね、日本人は昔から非常に桜の花が好きですが、雲南市は特に桜への愛着があります。元々この辺りは水害が多く、堤防が決壊しそうになったときも桜に助けられたり、戦時中の困難も乗り越えて桜を守ってきたりした地域なんです。今では桜が町のシンボルになっていますし、日本一の桜のまちづくりに市を挙げて取り組んでいるんですよ。
リアド:今咲いている桜の木の樹齢はどれくらいですか?
遠田:斐伊川堤防の桜の木は、どれも樹齢70年から80年くらいの老木です。通常は50年くらいなのですが、とても長生きしています。これは私たちさくら守だけの力ではなくて、古くから地域の住民が桜を愛し、みんなで世話をしてきたおかげだと思います。
サシャ:そんなに高齢なのに、とてもボリュームのある花を咲かせていて驚きです!
遠田:枝の先まで、お団子のように密集して丸々と咲いているのが自慢なんですよ。でも、今咲いている木もいずれ必ず枯れてしまいます。だから、私たちは次の世代の桜をどんどん育てているんですよ。雲南市に桜の名所が次々と生まれるように、日々頑張っています。

雲南市民の「桜愛」が見えたインタビューでした。
遠田さんはとても優しい口調で、日本語が得意でない私達に丁寧に教えてくださいました。「さくら守」という仕事のことについて聞いていくうちに、遠田さんの仕事に対する姿勢や考え方を学ぶことができ、なぜ雲南市の桜がそんなに魅力的なのか、その理由の一端が見えた気がしました。
今回のインタビューで驚いたのが、「桜が近い」こと。お団子のようにたわわになって咲いている桜の花が、手が届くほど下の方まで咲いていたのです。それにもかかわらず、桜の枝を折る人はほとんどいないのだそう。いかに雲南市民が桜を愛しているかを感じさせられました。遠田さん、ありがとうございました!