出雲の国を流れる斐伊川の近くを歩いていたスサノオノミコトは、上流から流れてきた箸を見つけ、川上に人が住んでいることを悟ります。川を上流へ遡ると老夫婦が泣いているところに出会い、泣いている理由を尋ねます。
老夫婦は「毎年、ヤマタノオロチに娘を一人ずつさらわれ、今は、このクシナダヒメただ一人となった。
今年もオロチが襲ってくる時期になり、悲しくて泣いている。」と答えました。聞くと、オロチの目はほおずきのように赤く、一つの身体に頭が八つ、尾が八つ。胴は苔むし、背にはヒノキやスギが生え、その長さは八つの山、八つの谷に渡るほど。腹は一面に血がにじんで赤くただれていると言います。
これを聞いたスサノオは「私がオロチを退治したなら、その娘を妻にくれないか。」と老夫婦に頼み、オロチに飲ませる強い酒『八塩折の酒』をつくりはじめます。
姿を現したオロチはスサノオの作戦どおりに酒を飲み干し、酔っ払って眠ってしまいます。この機をねらってスサノオは次々とオロチを斬り払い、見事に退治しました。すると、オロチのしっぽからは見たこともないほどすばらしい剣が現れ、スサノオはこの剣をこれまでさんざん困らせてきた姉の神アマテラスに贈ることにしました。これがいわゆる「草薙(くさなぎ)の剣(天叢雲(あめのむらくも)の剣)」です。
そしてスサノオはクシナダヒメと結婚し、新居の地を求めて須賀の地に至り、「わたしはこの地に来て、心がすがすがしくなった」と新居を築かれました。そのときに白い雲が幾重にも立ち上る様子を見て「八雲立つ 出雲八重垣妻ごみに 八重垣つくるその八重垣を」という歌を詠み、これが最初の和歌だと伝わっています。